心の状態と健康

以前に、『健康の定義』についての記事を書いたことがありました。

WHO(世界保健機関)が提唱している健康の定義は以下のようになっています。

「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱 の存在しないことではない。」

肉体と精神と社会は三位一体という感じですね。

私はこれに対して、最も重要なのは「精神的な健康」だと考えています。

「心の状態」はその人の健康状態をよく表していると思います。

しかしそれは、気分の落ち込みや精神疾患のように、わかりやすく症状として現れているものに限りません。

例えば以下のような場合も、かなり重度の不健康と言えます。

・他人を見下す
・嘲笑する
・自分の価値観を押し付ける
・マウントを取る
・趣味に極端に依存する
・他人を傷つける

このような他者に害を及ぼすタイプの人はなかなか自覚ができず、周囲からも指摘されにくいため、カウンセリングや治療に至るケースは少ないのです。

では、上記のようなタイプの人は将来的にどのような症状が出る傾向になるのでしょうか。

心の歪みと不健康について、いくつかのエビデンスをご紹介します。

1. 社会的つながりと健康

  • ハーバード大学が75年以上にわたって続けている「成人発達研究(Harvard Study of Adult Development)」では、長寿や幸福にもっとも関係が深かったのは、良質な人間関係であることが明らかになっています。
  • 他人を見下したり攻撃的なコミュニケーションをとる人は、孤立しやすく、慢性的なストレス状態に陥りやすい。これは心臓病や免疫低下のリスク因子にもなります。

2. 敵意やマウント気質と心臓病の関連

  • 長期的に敵意や怒りを抱える人は、冠動脈疾患や高血圧のリスクが高いというデータがあります(Williams et al., 2000年, Journal of the American College of Cardiologyなど)。
  • 常にマウントを取り、他者より優位に立とうとする人は、自己効力感の低さを内在しており、不安やうつの根を抱えたまま無理に補っている状態と見なされることがあります。

3. 他者攻撃・中毒的行動とドーパミン依存

  • SNSでの「他者批判」や「嘲笑」、極端な趣味への没入が報酬回路(ドーパミン)を刺激することがありますが、これは中毒的報酬であり、根本的な充足感とは異なります。
  • 心の飢えを満たせず、刺激で埋め合わせようとする人は、常に不安と欲求不満の中にいるため、慢性的な心理的ストレスにさらされているとも言えます。

ではなぜ上記のような状態の人が現れるのでしょうか。
以下にその原因の例を挙げます。

1. 自己価値の欠如と防衛機制

根底にあるのは「自分は価値がない」という無意識の思い

  • 他人を見下す人ほど、実は自尊心が非常に脆弱であることが心理学研究でも知られています(例:ナサニエル・ブランドンの自己尊重理論)。
  • 「自分は劣っているかもしれない」という不安を直視せず、代わりに他人を貶めることで自分を保とうとします。これは**投影性同一視(projective identification)反動形成(reaction formation)**という防衛機制の一種です。

例:ある種の「マウント癖」

  • 自信がある人は、実は静かで穏やかです。逆に、「すごいでしょ?」を頻繁に外に向ける人は、承認されたい欲求が満たされてこなかったことの裏返しです。

2. 家庭環境と愛着障害(アタッチメント不全)

幼少期の「心の土台」が影響する

  • 幼い頃に「無条件で愛された」「気持ちを聞いてもらえた」経験がない人は、自分の感情や存在そのものに安心感を持てません
  • 他人を支配することで関係をコントロールしようとするのは、「見捨てられる不安」や「愛される自信のなさ」が深層にあるからです。

愛着スタイルと攻撃性

  • 不安型・回避型愛着の人は、他者との距離感や信頼の築き方が極端になりやすく、それが「見下す」「依存する」「攻撃する」といった行動に現れることがあります(Bowlbyの愛着理論)。

3. 現代社会の構造と承認欲求の暴走

SNSと承認中毒

  • 現代は「評価されること」への依存が非常に強くなっており、他人からの“いいね”が自己価値の証拠になってしまう時代です。
  • この中で他者を下げて自分を上げる「比較による承認獲得」が常態化し、人格がゆがんでいくリスクが増しています。

4. 報酬系の誤作動と“悪い快感”

人を傷つけることで“快”を得る

  • 他人に勝つ・支配する・見下すことによってドーパミンが放出されることがあります。これは短期的には快感ですが、根源的な自己肯定感の向上にはつながらないため、さらに強い刺激を求めるようになります(いわゆる“攻撃の中毒”)。

5. 自己理解の欠如と回復の困難さ

そもそも“自分が問題”という自覚がない

  • 落ち込んでいる人は「自分はおかしいのかも」と苦しみますが、他人を攻撃する人は「周りが悪い」「自分が正しい」と感じる傾向があり、内省が非常に起きづらい
  • だからこそ、支援も回復も難しく、「社会的に孤立していく or 周囲を巻き込んで害を及ぼす」という悪循環に陥りやすいのです。

加えてお伝えしたいのが、歪んだ人にも「かつて子どもだった無力な姿」があるということです。

他人を傷つける人も、かつては誰かに傷つけられたり、無力感の中で育った「子ども」だったことが多いです。彼らが見せている攻撃性は、そのとき誰かに「助けて」と言えなかった心の叫びが、歪んだ形で出ている可能性があります。

とはいえ、他者を傷つける行為が許されるわけではありません。

心の歪んだ人とは適度に距離を取ることをおすすめします。
またご自身に自覚があるという方は、一旦自分を見つめ直す時間を作って、本当の幸せとは、健康とは、を今一度考えてみてはいかがでしょうか。

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