太陽の光を浴びるということ

私たちの身体は、想像以上に「太陽の光」に影響されています。
明るさ、あたたかさ、そして自然な光がもたらす安心感。
日々の忙しさの中で見過ごしてしまいがちですが、太陽の光を浴びることは、心と身体の健康に欠かせない「基本中の基本」なのです。

私がそれを強く実感したのは、大学時代にドイツへ1年間留学していたときでした。

暗さがもたらす心身への影響

ドイツの冬は、朝明るくなるのがとても遅く、夕方も早くに真っ暗になります。
起きると外はまだ夜のように暗く、学校から帰る頃にはまた真っ暗。
この「光のない日々」が続いたことで、私の心身は少しずつダウンしていきました。

気分が晴れない、朝起きるのがつらい、やたら甘いものが欲しくなる、集中力が続かない。
まるで見えない重りを背負っているような、そんな日々でした。

「北欧では冬の間にうつ状態になる人が多い」という話は有名です。実際に日照時間の少ない地域では、**季節性情動障害(SAD)**という光不足が引き金になるうつの一種が多く見られるそうです。

太陽の光が身体に与える影響

なぜ光がそんなにも私たちに影響を与えるのでしょうか?
その鍵は、「体内時計」と「ホルモンバランス」にあります。

私たちの身体には24時間周期のリズム(サーカディアンリズム)が備わっています。
朝、太陽の光を浴びることで脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)が刺激され、「今は朝だ」と身体が認識し始めます。これにより、以下のような働きが起こります。

  • セロトニン(幸福ホルモン)が分泌される
  • 体温が上がり、代謝が活性化される
  • メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が抑えられ、眠気が取れる

つまり、朝の光を浴びることは、心と身体を“1日のモード”に切り替えるスイッチなのです。

逆に、朝の光を浴びないまま生活していると、セロトニンの分泌が低下し、やる気が出ない、感情が不安定になる、睡眠の質が下がるといった症状が出やすくなります。

ピラティスと「光を浴びること」の関係

私はピラティスを指導する中で、「自然の光の中で身体を動かすこと」の重要性をよく感じます。
特に朝のピラティス。窓から差し込むやわらかな太陽の光の中で呼吸を深め、身体をほぐすと、気持ちが驚くほど穏やかになります。

ピラティスは、呼吸・姿勢・集中・コントロールといった要素を大切にするエクササイズです。
この“繊細さ”は、静かな朝の光ととても相性がいいのです。
光を浴びながら深く呼吸をすると、自律神経が整い、筋肉のこわばりも和らぎ、心が解放されていきます。

これは単なる気分の問題ではなく、実際にホルモンや神経系に影響を与えている現象です。

夏の白夜が引き起こす「光の過剰」

一方で、「光が多すぎること」もまた問題を引き起こします。
夏の北欧、特にフィンランドやノルウェーでは、夜になっても太陽が沈まない「白夜」があります。
一見すると明るくて楽しそうですが、現地の人たちの中には、不眠や神経の高ぶりを訴える人も少なくありません。

私もドイツの夏に白夜に近い日を体験しましたが、夜10時でも空が明るく、なんとなく気持ちが休まらず、眠れない日が続きました。
人間の身体は、やはり「暗くなることで眠る準備をする」ようにできているのです。

この経験からも分かるように、太陽の光は“量”と“タイミング”が大切
適切な時間に適度な光を浴びることが、心と身体の健康を守るために必要なのです。

では、どうやって「光と付き合う」のがいいのか?

ここで、日常生活の中で意識できる「光との付き合い方」のヒントをいくつかご紹介します。

1. 朝起きたらまずカーテンを開けて光を浴びる

できれば15〜30分ほど、自然光を浴びましょう。
曇りの日でも外の光は室内照明の10倍以上の強さがあります。

2. 朝のストレッチやピラティスを日課にする

身体を動かしながら光を浴びると、セロトニンの分泌がより促され、1日をポジティブにスタートできます。

3. 日中はできるだけ外へ出る

リモートワークや家事に追われて外に出ない日もあるかもしれませんが、5分でも良いので太陽の下を歩いてみてください。目から入る光が体内時計を整えます。

4. 夜は照明を落としてリズムを整える

光は「朝の活力」だけでなく、「夜の休息」にも影響します。
夜はスマホやPCのブルーライトを減らし、柔らかな照明に切り替えて、副交感神経を優位にしましょう。

心と身体に光を届けるということ

太陽の光は、ただの明かりではありません。
それは、私たちの心と身体のエネルギー源です。
暗闇に身を置きすぎれば、心も閉ざされ、身体も鈍っていきます。
逆に、朝の光を浴び、深く呼吸し、自分と向き合う時間を持てば、自然と活力が戻ってきます。

「最近なんだか疲れやすい」「気分が落ち込みやすい」
そんなときは、まず太陽の光を意識してみてください。

そしてできれば、その光の中で、静かに身体を動かしてみてください。
ピラティスで呼吸を深め、身体の芯から自分に戻る時間を持つだけで、日々の質が変わってきます。

太陽の光は、誰にでも平等に降り注いでくれる、自然からの贈り物。
それを受け取るかどうかは、私たち次第です。
今日も、自分に優しい光を届けてあげましょう。

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